グイン・サーガ 外伝19 初恋 栗本薫

これも一晩で読む。グインはあまり間を置いては読めないからなぁ。作者がもっとも好きなキャラクターであるアルド・ナリスの若かりし頃を描く。本伝で殺してしまったから外伝で露出が増えてる。
「彼がどのように彼になったか」
それを描き込むのには必要なストーリーだった。上位の王位継承権者で、絶世の美貌、様々な権謀術数を操る世界に稀なる明晰な頭脳を持ち、国内一のレイピアの使い手、宰相、国軍の最高司令官、社交界の盟主・・・あらゆる地位を本人の素質と努力と、そして「青い血」によって手にしている者。本伝のストーリーに与える影響の大きさから、当初より「死」が与えられることは確実と思っていた。死ぬまでに何をするか見守ってきた彼が、ではどうして彼になったのか。それはこの物語の重要な要素なんだねぇ。
彼の「彼以外の人間」との関わり方を方向付けたエピソード。本伝87巻で死の間際に語る想いが「初恋」を読むとさらに哀しく、でもナリスの生涯が最期には幸せなものに”なった”のだと分かる。哀しいけれど嬉しい。不思議なお話だし、不思議な人物だねぇ。